アガペーの愛を持つ主人公ラブコメ「あいこら」

あいこら 3 (少年サンデーコミックス)

あいこら 3 (少年サンデーコミックス)

この③巻、近くのそこそこ大きい書店ではなんと発売日即日完売していた。
この勢い!本物ではないだろうか!?(初日を攻めて正解だった…)
裏打ちするかのように内容がこれまた勢いづいている!面白い!

あいこら」、作者は前回一応アニメ化もされた「美鳥の日々」でスマッシュヒットをとばした井上和朗。
現在佳境の「からくりサーカス」の藤田和日朗のアシ出身。
「美鳥〜」で培ったラブコメ手腕が、今回更に洗練された感じだ。

今作はなんと「フェチ」がテーマ。少年誌にしては斬新すぎる設定で(汗)、いつぞやは新聞の文化欄で取り上げられていた(笑)

女の子その物に劣情も恋愛感情も持たず、ただただ「理想の瞳」「理想の脚」などパーツ毎に愛情を注ぐ、変わった性癖の持ち主、主人公・前田ハチベエ15歳は、ひょんなことから女子寮に入寮するハメに。
しかしその寮で自分の理想の「瞳・胸・声・脚…」を持つ女の子達に出会う…といったハイテンションドタバタフェチラヴコメ。
のっけから「何たってやっぱさァ…女はパーツだろ!!」と熱く主張するのが、清清しくて堪らない(笑)今まで中々見なかったキャラだなあ。GS美神の横島とか、うる星のあたるとか、スケベである事を売りにする男主人公というのは今までもいたが、それともまた違う。
なんといっても彼は性欲はさておいて、ただただ理想のパーツを愛でる事にバカバカしいほどの心血を全力で注ぐのである!
時に貯金を使い果たし、時にズタボロになり、時に不良を叩きのめしても少女達を守り抜く!全ては素敵パーツへの愛故に!!

一見素敵パーツ種別ごとの少女達にハアハアしているハチベエは、たらしに思われるのだが、その献身的な愛にヒロイン達はトキめかされる。この双方のベクトルがちょっとズレているのが可笑しくて堪らない。
ちなみに当初は「瞳・天幕桜子ツンデレヒロイン」
「胸・月野弓雁 巨乳メガネっ子」
「声・鳳桐乃 クールロリ忍者」
「脚・雨柳つばめ 関西弁カラっとした女教師」と4人だったが、序々に「腰」「尻」等新キャラ素敵パーツヒロインが追加、カスタマイズされ(笑)世界観に一層の広がりを持たせている。

この漫画がただのラブコメ漫画に留まらない理由として、やはり主人公の性癖があげられるだろう。
普通この手のギャルゲー方式のハーレムラブコメは、たいがい主人公には読み手が感情移入しやすいようにするためか、没個性で優柔不断という(例・ラブひな)少年を持ってくるところだが、ハチベエは没個性どころか主張しまくりである!ヒロイン達に対して常にひるまず一直線であり、そこが見ていて痛快で清清しい。
しかしこの主人公は、今の今まで「恋」をした事がないのである。
素敵パーツを持つヒロイン達と「お近づきになって素敵パーツを愛でたい!」という欲望は丸出しだが、その先「つきあいたい」とかどうこうしたいという欲は全くないのである。


エロス=典型である男女間の性愛にみられるように,愛の対象のもつ価値に惹かれる感情。慕い求める愛。
今までのラブコメで取り上げられる通常の「愛情」をエロスとするなら、この「あいこらハチベエの「愛情」は、アガペーの愛であろう。


アガペー=対象そのものに向かう愛。エロスが対象を介してより高い価値に向かう自己中心的な愛であるのに対して,アガペーは他者中心的な愛であり,自己犠牲・自己否定的な性格の愛であり、代償を求めての打算的な愛ではなく,本質との純粋な交流をめざす。


現在本誌連載作品では、ハチベエの愛情が自分ではなく自分のパーツに向けられている事実を序々に知ったヒロイン達が、「私のカラダが目当てだったの!?」とショックを受ける展開になっている。
正直結構この作品のターニングポイントであろうからもう少し出し惜しみすると思ったのだが、かなり早く勝負かけてきたな…と驚いた。
ヒロイン達は衝撃を受けながらも、まっすぐな主人公にトキめきもして(笑)「だったら私がハチベエ(さん)に本当の恋を教えてあげる!」とファイトを燃やす!という驚異的な展開になっている!!

これはお見事!!拍手喝采であった。

下手を打つと、鬱なテーマになってしまうこの問題を「前向き」「成長物語」として進めるストーリー展開は本当に清清しい!見ていて爽快である!
そう、ハチベエもいつまでも「パーツ萌えー!!vv」では留まらないのである。素敵パーツを持つヒロイン達は、ハチベエによってトラウマが解消されたり、注がれる愛情に傷ついた思い出を癒されたりもして成長していく。
同時にそのヒロイン達の眩しい魅力や、ハチベエに向けられる優しさに、ハチベエが『恋』のトキメきに戸惑ったり赤くなったり、胸の痛みを知ったりする、成長物語が根底にある!
ただのドタバタラブコメに留まらない魅力や可能性が「あいこら」にはある!
本来はアガペーもエロスも実は混ぜん一体となった一つの愛である。

今は別ベクトルの、ハチベエと素敵パーツヒロイン達の愛情が一つになる展開が待っているのかもしれない!と思うとこの漫画の秘めたありとあらゆる可能性にクラクラする(笑)
今、先が気になってしょうがない、楽しみなラブコメ漫画のひとつである。



追記・それはそれとして③巻ではとうとう「素敵パーツ・理想の尻を持った 美少年」が追加され、ハチベエアイデンティティの崩壊というかゲシュタルト崩壊を起こしているのが笑えて仕方ない(サンデーでよくここまでやったなあ)
早く④巻での「ハチベエ様私のくびれを見てーvvv」「ハチベエさん!ほらこっちはレシーブ!!レシーブ!!(たわわに揺れる胸)」とガチンコパーツ合戦収録が楽しみ(笑)
あと主人公が腕力で素敵パーツを守り抜く!という設定は本当に愉快痛快なので、なんぼでも新展開できそうだ。
あと「理想の瞳・胸・脚・声・腰・尻」一人で兼ね備えたそれこそ最強アイコラヒロインが出てくるとかな(笑)
……まあ流石に最終回までとっとくだろうけど(汗)今後アニメ化したらやりそうなネタだな(笑)