長期連載「RED」の思い出

k-arima2005-11-02




「RED」著・村枝賢一 全19巻(最終巻は12月発売)

先日、足掛け7年に渡る作者最大の長期連載が最終回を迎えた。
この作品は実に不運というか何というか、今は休刊されてしまった「アッパーズ」というヤンマガ派生の隔週青年雑誌
創刊時の柱として連載開始された。
俺たちのフィールド」代表作の村枝賢一講談社初仕事という事だったが、あまりにも雑誌自体おいているコンビニも書店も少なく、正直「知る人ぞ知る」作品であった。どうにも不憫で不遇な印象がある。
また刊行当時は今までの作品と180度作風が変わり、従来のファンも取っ付き難かった事も一因であろう。(ファンの間では「村枝先生のあの人情ドラマが好きだったのに…」「アクションやスプラッタは苦手」など“離れて”しまったファンも多かった)どんなに進めようが「雑誌自体見かけないから立ち読みもできない」と必死の普及活動にもにべもない
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当時書店員であった私もはかばかしくないスタートに「ヒットは難しい…」と唸っていた。「俺たちのフィールド」終了後、「かもしか」という人情市役所漫画の連載があったのだが、…これが売れなかった(シビアに)「俺フィー」連載時に増刊で連載していた下町屋形船漫画「佃島パイレーツ」も(個人的には大好きな作品なのだが)はかばかしくはなかった…。
これで現場の人間としては「スポーツ物以外でこの作者の漫画は売れない」と泣く泣く判断せざるを得なかったのだ。入荷数減らしたり…在庫減らしたり…。

実際「RED」の単行本刊行も最初は正直微妙な感じだったのだが…(※勤務先は郊外店でマニア向けではなかったのだが、もしかすると漫画専門店ではスタートダッシュだったかもしれない)
巻が進むにつれて「骨太」な手ごたえを感じた…。
特に同時期マガジンZで連載の「仮面ライダーSPIRITS」の単行本がヒットした以降は、講談社も大分力を入れてくれて「ああようやくREDにも陽の目が……」と感動したものである(笑)
10巻発売当時は『一挙6タイトル村枝賢一作品同時発売』というブックフェアまでやってくれた(感慨)※画像は当時の単行本の帯
正直買う側としては懐が寂しくなるフェアであったが(笑)
これで不安だったファンとしては、ようやく「ああ…REDは打ち切られず最期まで連載があるかもしれない…」と希望が持てたものだ。
昨年掲載雑誌が休刊、ヤンマガに移籍、という事もあった。移籍直後「あと1巻でラストです」発言などもあり、正直「…1巻でまとめて下さいとか言われてんのかなあ…」と不安だった(笑)実際ファンの間でも「ヤンマガに来て展開急ぎすぎじゃね?」と囁かれたりもした。正直メジャー誌掲載でブレイク!!など甘い夢を抱いた事もあったが、よく考えればいきなり最終章はじまってもヤンマガ読者もとっつきにくいよな…。
しかし心配は杞憂に終わり、当初の18巻完結も19巻に延び(笑)、10月31日発売号にて感動と震えと涙の止まらない『見事なフィナーレ!』を迎えた。

いやこれはもう見事!!今まで作品を通して提示されてきたテーマが、ガンガン咆哮を上げ主張し続ける最終章であった!数年前まで村枝賢一の代表作は「俺たちのフィールド」であり、今は「仮面ライダーSPIRITS」であるが、『傑作』は『RED』に他ならないと思える!

長期連載はとかく「最初は面白いが途中がダメ」とか「最後がふざけんなー、ってくらいグタグタ」「最終回読んでブックオフ売った」とか悲劇が起きやすいのだが(笑・個人的には良作俺フィーも終盤のW杯編は微妙だった…)これはいいラストだった。
勿論賛否両論はあるだろう、もっとハッピーエンドもいくらでも考えられるだろう、悲劇的だが…しかし『救いようがある』ラストなのだ!
「RED」とは「赤」とか「何」だったのか?コレを見事に描き切り「答」を明確に提示したラストはちょっと珍しい。
『期待が最後まで裏切られなかった』事に感謝と拍手を送りたい…(涙)ありがとう本当にありがとう。古本屋なんかに売るもんか、ええ売りませんとも!

長い作品なので皆さん二の足を踏まれるとは思うが、とにかく漫画喫茶でもいいから3巻くらいまで読んでみてください…。ハマる事間違いないですよ。
作品アオリの『ハードコア復讐西部劇』『ガンアクション』に留まらない深さと熱さと哀しさがあります!!